「……………」

彼女は大層驚いていた

触ることができる人間がいることに驚くのも当たり前だろう

昔、両親が言っていたが俺がまだ小さい時に幽霊のおはらいを専門にしているお寺の住職に見せに行ったらしい

すると住職は「この子は霊感の塊みたいなものだ、私のような仕事をすれば天職になりますな」と驚きながら言ってたらしい

そのぐらい霊感が強いのだ

幽霊に触ることができるくらいなのだから



彼女はずっと俺の胸に手を当てたままだ

彼女の手から伝わるのは冷たい感触だけ

生きてる人間のような温もりは何もない



「なぁ…そろそろいいか?」

ずっと触られてもあまり居心地が良いとは言えない

俺は少し控え気味に話してみる

「あ…すいません…」

彼女はサッと慌てて手を引っ込める

そのせいか、頬が淡く紅潮している

今までどたばたしていたが彼女の容姿をゆっくり観察できる余裕が出来た

髪は短く色は淡い茶髪

顔はとても小さく、瞳は大きかった

服は何故か制服だった
多分俺より歳は低いだろう

一通り観察した感想は単純に"可愛かった"だった

クラスに居れば絶対にヒロイン、オフィスに居れば高嶺の花のような存在だっただろう



「…あの…何か顔についてますか?」

そして今彼女の顔を気持ち悪いくらいに見つめていた自分に気付く

「あ…!悪りぃ…えっ…と…」

チクショウ!なんで今日、俺はこんなに恥ずかしい思いばかりしないといけないんだ





クスッ

「?」

目の前の彼女は笑っていた

俺の慌てっぷりが可笑しかったのだろう

そんな彼女の笑顔も可愛かった

少し経ってから俺も可笑しくなって笑った

笑い声が古い家に響いた…