「……」

「…?」

自分が今どんな表情をしているのかわからなかった

多分かなり焦っていた顔をしていたと思う

少女は俺の顔を見て首を傾げる

そして意識がはっきりした俺は

「どわあぁぁぁあ!!」

思いきり叫んで少女から離れた

部屋の隅まで下がり、ガンッと背中を打った後

少女は正座の状態から立ち上がった

「………ねぇ?」

少女は少し驚いた顔をしていた

「…な…なんだ?」

俺は少女の疑問に答えるべき聞き返した

「…私が…見えるの…?」





「……は…い?」





流れる沈黙

この沈黙の中、俺の思考はがっちり固まる

目の前の少女のすね辺りが

消えていたのがわかった

今立ってるように見えるが実際は数cm浮いていた

これでわかった

彼女がこの家に憑いている幽霊ということが

「…見えるんですか?」

「…あ?」

自分の思考の整理ばかりで彼女の質問に答えるのを忘れていた
いや、もう答えなくてもわかると思うんですけど…

「…あぁ、うん…見えるよ」

俺の言葉を聞いたとたん、彼女の表情が明るくなった

「ホントですか?」

彼女の嬉しそうな声を聞くと、何か懐かしい感情が込み上げた

彼女だけでなく、俺が見えると言って喜んでいた幽霊はたくさんいた

小さな子供の幽霊から老人幽霊まで

無くなったはずの自分の存在が見える人がいて嬉しい、と自ら命を絶った女性が言っていた

しかし

俺は特別な体質らしく、幽霊が見えるだけではなかった

「あ…あの…」

「ん?」

やっと落ち着きを取り戻した俺の耳にはちゃんと彼女の言葉が聞こえた

「どした?」

「え…と……ちょっといいですか?」

「?」

彼女が静かに俺に近づいた

そして腰を下ろして俺と同じ目線になる

そして

小さな自分の手を俺の胸にあてた





俺は特別らしい

それは

幽霊が見れるだけでなく

触れたり触れられたりすることができるからだった