抱き締める度に神谷は葛藤を繰り返す。

抱き締める度に神谷の体はふるふると震えてしまう。


頭の中では分かってんだけどな…。



神谷が須賀を忘れられない事。
多分、俺じゃ…代わりになれない事。


けど、そんなもん取っ払って、神谷が好きで。
ガキみたいに求めてて正直自分でも参る。



「はっ。ヤキが回ったな。俺も…」


自嘲気味に呟く。
わしゃっと掴んだ髪に自然と力が入った。


葛藤したまま俺の方に傾きゃいいのに。
神谷の心は今、物凄い危うい場所にあって、手が付けられない。
誤って手を差し出してしまったら、俺の望む回答が出てこない気がして躊躇してばかりいた。