カタン


そんな事をボーッとする頭で考えていたら、小さな音がした。
そちらの方へ視線を流すと、今一番逢いたくない顔があった。


「…石井ちゃん」

「授業サボって何やってんだ?あぁ?」

「見れば分かるんじゃないの?」


ちりっと火花が散る。
なんだったこの人は、いつもこうやって自信に満ちているんだろう。


「…お前、また泣かせたろ?」

「……」

「ちっ。…もう容赦しねぇよ?覚悟しな」

「って言ったって、先生と生徒じゃ、問題アリアリなんじゃないの?」


精一杯の意地で反抗するけど。


「あぁ?んなもん、あと数ヶ月我慢すりゃ、解決するもんだろ。関係ねぇよ。」

「…じゃあ、好きにすれば?」

「お前、それ、本気か?」

「……っ」

「何考えてんのかしらねぇが。あいつを泣かす奴には渡せねぇな。だから、お前も身の振り方考えな。赤ん坊じゃねぇんだ。そんくらい考えなくたって分かるだろうけどな」

「石井ちゃん…」

「あぁ?なんだよ?」

「小桜のこと本気なの?」


一瞬の沈黙の後。
真っ直ぐにオレを見つめて、石井ちゃんは言い放った。


「ったりめぇだろ。じゃなきゃ、生徒一人、こんなにも気に留めてねぇよ」


そして、それだけ言うと「ちゃんと、授業受けろよ」と残して立ち去ってしまう。