立ち上がったその足で、小桜のことを探しに行こうかと思ったけれど、どうしてもそれが出来なくて俺は旧館にあるもう誰も入る事のない図書室へと向かった。


そこは少し古びた紙の匂いがして…なんとなく心が落ち着いた。
何か考え事を一人でしたい時だけ訪れる、俺の隠れ家的なスポット。
ほかの誰にも教えていない俺だけの場所。




「はぁ…オレ、ちょっと、沈むかも…」


本棚に背を向けて座り込むと、オレはそう呟いた。
それは、誰にも打ち明けられない、心の声。


小桜の涙の理由が知りたい。
小桜の気持ちが知りたい。
小桜の全部が…知りたいだけ、なのに。


「全然追い付けないや…」


手を伸ばして、近付こうとすればする程、それは空を切って叶わない。
子供のようにもがいて叫んで、地団駄を踏んだら…。
少しはこっちを向いてもらえるんじゃないかって。
そんな風に思っていた事を後悔する。
現実はそんなことを許さないから。