「さよなら」




唐突に、そうタイプする。

これ以上傷つきたくも、傷つけたくもなかった。

本当に愛した人だったから、幸せになって欲しかった。

溢れ出した涙を堪えずに目を閉じる。

記憶がゆっくりと動き出す。

彼に出会った日のこと。

初めて会話をした日のこと。

告白された日のこと。

初デートの日のこと。

全てが幸せだった日々。

失いたくないと願った日々。

「嫌だーー動くな、動かないで……!」

彼のことを、嫌いになれなくなってしまうから。

私の意に反して、ゆっくりと記憶が動き出す。

私は抗うことを諦め、眠りの世界に身を落とした。