『あれ、橋本さんじゃない?』


此方を見た星花さんと遂に目が合ってしまった。


瞬間、あたしは急いで目尻を手で拭う。


やばい、今の話盗み聞きしてたなんてバレたら――



「橋本さん、ちょっと話せる?」


星花さんは目の前まで来るとにこっと笑い掛けてきた。


な、何だろうか。


ごくりと生唾を呑む事しか出来無いあたし。




「あ、あたし先に行ってるね」



空気を読んだ縡ちゃんは耳元でぼそっと囁くと買ったジュースを握り締めてぱたぱたと足音を立ててその場から居なくなってしまった。



縡ちゃんが選んだジュースはファンタグレープだった。
って言うかジュースを買うのに付き添ったのはあたしなんだけどな。


なんて、頭の中は意外に冷静なのか。

いや、パニックだ。