「もう…大丈夫です」

歩みを止めた蝶は、目を逸らして言った。

「でも、まだいるかもしれないよ」

「いいの」

不登校という言葉を聞かれたであろうことも、声さえ出せずに固まる自分を見られたことも、何もかもが嫌でまた声がすぼんだ。

「助けてくれたのに、ごめんなさい。…これ以上関わらないでください」

無言で理由を問う視線に、気まずくて顔を伏せた。

「優しくされたら、辛くなるだけなんです。こんな人間だって、知っているのに」

思い知らされる。
光の中にいる人を見ると、どうしようもなく惨めになる。

自分がこんなにも泥の中にいるのだと。