(……返しに行こう)

どうせ、一週間後まで梅雨時期なのだし、いつ返しに行こうと雨に降られるのは間違いない。それなら、早く返しに行った方がいい。

「あ」
ドアを開け、置いてあった朝食をバツの悪そうに少し左によける。

帰ってきたらちゃんと食べよう、と心に決めながら、湯気の立った味噌汁に後ろ髪を引かれつつ玄関を出た。

(けっこう、降ってるな)
傘をさして外に出た蝶は、図書館への道を行きながら見慣れた制服姿に出会い、咄嗟に顔を伏せる。

鼓動がゆっくりと大きく跳ね、口の中がからからに乾いた。

「あれ?…お前、紀ノ川?」
「………っ」

視線が交差し、息を呑んだ直後、その男子が弾けたように笑った。

「見ろよ、お前ら!不登校の奴だぜ!」