「いつ?」
「三週間前くらい」

「…付き合うことに、したの」
「まだ、決めてません」

そう、と息を吐いた彼女の瞳が揺れているような気がして、思わず覗き込む。

「えっ?」
「えっ」
花のような甘い香りがして、蝶はようやく自分が彼女に顔を近づけていたことに気がついた。

「…………っ」

息を呑むのに、離れられなくて、蝶は震える長いまつ毛を見つめていた。

「蝶」
彼女の吐息が頬に触れて、蝶は心臓の跳ねたのを感じた。

甘い香りに頭の芯がくらくらしている。

彼女は私よりも少し背が高くて、見上げる形になっていた私に、ふいに彼女が背をかがめた。

「………え」
やわらかな感触に、蝶は我に返った。