「通院してるんですか?」

「ううん。母のお見舞い。蝶ちゃんこそ、何か持病があったの?」

私の患者服を見てそう言った彼女に、私は首を振った。

「…ちょっと、骨折というか。入院していたんですけど、今日で退院」

「そうなの。良かったね」

「はい」
小さく返した私は、彼女の瞳をゆっくりと見た。

「どうでもいいこと、話してもいいですか」

ふふっ、と彼女が軽やかに笑う気配がした。

「いいわよ。聞きたい」
その返事に、胸が締め付けられる思いがした。

「私、友達の男子に告白されたんです」

なんとかその余裕な表情を変えたくて、そんなことをついこぼしてしまう。自分でも、なぜ彼女と関係ないそんなことを言いたくなったのか分からなくなった。

彼女は、目を伏せて「…そっか」と呟いた。

その反応をどう取ればいいのか戸惑っていると、彼女は顔を上げて仄かに笑った。