「私は、高月のことが好きだけれど、同じ意味の思いなのか分からない」

示してくれた覚悟に、返せるだけの覚悟を持っていない。

そう言うと、高月は笑った。

「それでも、いいよ」

「…どうして」

「無理強いはしたくないんだ。本当の気持ちに気づく時まで、待つからさ」

その結末がどちらでも受け入れる。
そう、高月が言った。

「…ありがとう…」
どうしてなんだろう。
嬉しいはずなのに、笑うことができないのは。

頭の中に、踏み切れない思いがあるのは。

「ごめん。整理がつくまで…」
「分かった」
即座にそう返事した高月は、病室を出ていった。

蝶は、その姿を見送りながら、自分の気持ちの在り処を探していた。

(好きとか、嫌いとか、分からない)

分からないのに。

「私、今、嬉しかった?」

その問いが思いの外真実を突いている気がして、蝶は黙り込んで窓を閉めた。