朦朧とした意識の中では定かではないので、もう一度話したかった。

「…高月」

「呼んだ?」

え、と振り向くと、高月がドアに寄りかかって立っていた。

「気づかなかった」

「そっか。俺の前世、忍者かもな」

どうでもいい冗談を呟くと、自分でもそれを分かっていたのか、高月は笑うこともなくベッドに近づいた。

「あの時俺が、なんて言ったか覚えてる」

「…よく、聞こえなかった」

誤魔化すと、高月は息をついた。

「じゃあ、もう一回言うわ」

その言葉に、蝶は思わず姿勢を正した。

目と目が合って、その真剣さに何だか言い表せない気持ちになった。

「好きだ」

吹き込んだ風が、髪を揺らした。

一言がこんなに耳に響く感覚は、初めてで。
強い思いの滲んだ瞳から、目を逸らしてはいけないと思った。