『もしもし堀川です!』
「あ、由里?蝶です」
『うん』
分かっていた、と電話越しに軽やかに笑った気配がした。

穏やかな声音に、胸の中でわだかまっていたものがほどけていくのを感じた。

「あの…今、学校ってどんな雰囲気なのかな」

『学校?中間考査前1週間を切ったから今はわりとピリピリしてるけど、楽しいよ。もしかして、来るの?』

その期待に満ちた声に、結論を出していないことが後ろめたくなる。

「急には、無理だよ」

『でも、もうあの日から二ヶ月も経ってるじゃない。みんなのほとぼりも冷めているし、頃合だと思うよ』

励ましながらも、引くことのできる間合いを残している気遣いに胸があたたかくなった。

でも。
「今更、顔出してもさ」
苦笑した蝶に、由里は僅かに怒った口調になる。