心配そうな声に、はっと我に返った。
静けさの広がる図書館の自習ルームだった。
「蝶、最近いつもぼんやりしてる」
隣の席から訝しむのは、由里だった。
「…気のせいじゃない?」
と返すと、由里は鋭く切り込んだ。
「前にここで会ったあの人?」
「………、どうして」
躊躇いが、友人の疑いの目を深めさせた。
ふと、由里の瞳に影が落ちる。
「私には、言いたくないかな」
ちがう、と言い切れなくて唇を噛んだ。
「別に、そういうことじゃ」
曖昧に誤魔化すと、罪悪感で胸に針が刺さった。
「うん、ごめん。私もちょっとずるい言い方したね」
いつも勝ち気に笑う由里が、寂しい顔をした。思わず手を伸ばしかけて、引っ込める。
だってどう言えるだろう。
友情でも憧れでも、どうとも形容出来ない、ただ名残惜しいだけの思いを。
静けさの広がる図書館の自習ルームだった。
「蝶、最近いつもぼんやりしてる」
隣の席から訝しむのは、由里だった。
「…気のせいじゃない?」
と返すと、由里は鋭く切り込んだ。
「前にここで会ったあの人?」
「………、どうして」
躊躇いが、友人の疑いの目を深めさせた。
ふと、由里の瞳に影が落ちる。
「私には、言いたくないかな」
ちがう、と言い切れなくて唇を噛んだ。
「別に、そういうことじゃ」
曖昧に誤魔化すと、罪悪感で胸に針が刺さった。
「うん、ごめん。私もちょっとずるい言い方したね」
いつも勝ち気に笑う由里が、寂しい顔をした。思わず手を伸ばしかけて、引っ込める。
だってどう言えるだろう。
友情でも憧れでも、どうとも形容出来ない、ただ名残惜しいだけの思いを。