体育祭があった週の土曜日。
リッくんから電話がかかってきた。

『もしもし?どうしたの?』

【どっか出かけね?】

『急にどうしたの?』

【えっと…。】

しばらく間があって。

【俺らさ、デートした事ないじゃん?】

体内の温度が一気に上がる。

『えっ?あ、うん。そうだね。】

私はベランダに出た。

リッくんの部屋が見える。

すると、リッくんもベランダに出てきた。

目が合う。

【だから明日、出かけよう。】

真正面からの誘いを断れるはずもなく。

『うん!楽しみにしてる!』

そう、返事した。

この時のわたしは、まだ知らない。
幸せの時間が終わりに向かっている事を。