リッくんと別れて30分後。

メールが届いた。

“助けて”

何事かと思い私は急いでメールの送り主、
リッくんに電話をした。

『もしもし?リッくん大丈夫⁉︎』

電話はすぐに繋がった。

電話の向こうで怒鳴り声が聞こえた。

〈だから!私が黒鉄君の隣に座るの!〉

旅行係の声が聞こえる。

ガチャガチャ

【ゴメン!あんなメールして。聞こえたと思うんだけど、女子が喧嘩してて困ってんだよ。】

『スピーカーにしてくれる?』

私は出来るだけ優しい声で言った。

【ん。大丈夫だ。】

私は息を思いっきり吸い込み叫んだ。

『リッくんは私の彼氏なの!誰にも渡さない‼︎リッくんから離れて‼︎』

凄く静かになる電話の向こう。

【耳が痛い…。】

数秒後、リッくんが言った。

〈わかったわ。電話してくるって事はそれだけ黒鉄君の事好きって事だものね。…でも、
譲れない‼︎〉

旅行係の子がそう言うと電話が切れた。

『あ……。切れた…。そんな…。』


【おめぇ、何してんだよ!】

バスの中にて。

黒鉄君はぶち切れしていた。

〈だ、だって!私、本当に黒鉄君の事好きなんだもん。中等部の時からずっと好きだったんだもん。黒川さんよりも先に…!〉

黒鉄君は旅行係のアゴを引っ張りあげた。

【俺は幼稚園に入る前から、この牧野大学付属牧野学園に入学する前から好きだったんだ!確かに付き合い始めたのは中等部に上がってからだけど、おめぇが俺を好きになる前から弥生は俺を好きでいてくれたんだ!】

バスの中が静まりかえる。

〈ふ、うぅ…。うわぁん。〉

旅行係の子が泣き出した。

そして…。

〈ご、ごめんなさい、わた、私…。〉

そう言うと旅行係の子は自分の席に着いた。

クラスメートは黒鉄君の言った事の驚きから抜け出せていなかった。

一方、弥生は…。

『はぁ…。言い過ぎたかな?でも、リッくんの事取られたくなかったし。』

ベッドの上でスマホ片手に悩んでいた。

罪悪感が心を支配していた。

その後も考え続けた結果、疲れて寝てしまった。

ピンポーン

インターホンの音で目が覚めた弥生は
寝ぼけ眼で出た。

『はい…。』

すると急に抱き締められた。

【ごめん。心配させてごめん。会いたかった…!】

リッくんである。

『ば、バカッ‼︎会いたかったのはこっちだ!
来るの遅い‼︎』

【ヤキモチ妬いた?】

私は、恥ずかしくて小さく頷いた。

【そっか…。ごめん。嬉しい。】

『バーカ。リッくん。大好き』

私はリッくんに抱きついた。