私はそのままリッくんの部屋に案内された。

リッくんの部屋は本棚が一つとベッドと
勉強机、クローゼットがあった。

リッくんのお母さんは勉強机の1番上の引き出しから一冊のノートを取り出して私に渡した。表紙には日記と書かれている。

私はそっと中を開いた。

“5月5日。

弥生と付き合う事になった。

嬉しくて叫びそうになった。

6月3日。

弥生が学校を休んだ。

高熱をだした。

辛そうだった。

変わってやりたかった。

4月7日。

今日は始業式。

俺ももう高校生。

4月21日。

今日は遠足の班決めとバスの座席決めをした。

何とか弥生の隣をゲット。

スッゲー楽しみ。

4月28日。

遠足当日。

弥生が胃腸炎で遠足に行けなかった。

電話で叫んだ弥生がスッゲー可愛いく感じた。俺、愛されてるわ。"

そこには私と過ごした日々が書かれていた。

私は泣きながら必死に読んだ。

日記は事故の前日で終わっていた。

“6月2日。

明日は弥生と初デート!

緊張して来た。

でも、スッゲー楽しみ。“

そこで日記は終わったように思えた。

〈最後のページを見てくれる?〉

リッくんのお母さんに言われ最後のページを見る。

“弥生の好きな所“

と、書かれている。

私はドキドキしながら読んでいく。

“笑顔がメッチャ可愛い。

拗ねた顔が可愛い。

からかうと可愛い。

でも、泣いてる顔や不安げな顔を見ると守ってやりたくなる。


俺は弥生の笑顔が1番好き。”


『うぅ…。ぐすっ…。リッくん…。
会いたいよぉ…。リッくん…。』

私は泣き崩れた。

そしてそのままリッくんのお母さんに謝った。

『ごめんなさい…。大事なリッくんを私と一緒に出かけたせいで…。謝ってもリッくんは帰ってこないけど、謝る事しか出来ないから…。謝ります。本当にごめんなさい。』

〈顔をあげて。〉

リッくんのお母さんに促され顔をあげる。

〈私は、いいえ。私達はあなたのせいだなんて思ってないの。私達が恨んでいるのはトラックの運転手よ。運転手は無傷で、あの日も走って逃げたって。今もまだ見つかってないみたい。〉

リッくんのお母さんは涙を拭い、続けた。

〈それに、あなたは謝る事しか出来ないと言ったけどそれは違うわ。陸の日記にも書いてある通りに、あなたは笑う事が出来る。〉

リッくんのお母さんはしゃがみこみ私の涙を拭った。

〈陸の分も精一杯生きて。沢山笑って。〉