春の夕暮れ。
オレンジ色の太陽の光が川の流れる音と電車の走る音にぴったり。
いつも通りの帰り道。
私、土屋なほの横に並ぶ松永あきのは私の幼なじみであり片想いの相手。

「あき、今日の数学のテストどうだった?」
「あー全然ダメだった。」
「え、何点何点?」
「教えねーよー。」
2人の間に笑い声が漏れる。
こんな日常的な会話だけど私にとっては家族と話すのと同じくらい大事な時間。
『あきは私のことどう思ってるんだろ…』


俺、松永あきは隣を一歩後に歩いているなほに片想い中。
『なほに片想いしてもう十年が経つのか。はえーなー。』
早く気持ちを伝えないといけないのは分かってる。だけど今の関係が壊れたくない。
だから伝える気はない。

「なぁ…なほまた告られたんだって?」
「え…あ、うん…」
「返事は?」
「私…好きな人いるし断ってきたよっ」

『なほも好きな人がいるのか…』
なほには好きな相手と幸せになって欲しい。
応援したいけどそんなことできねーよ。諦めたくない。
『もう少しで伝えるからそれまで待ってろよ…。』


なほの家の赤い屋根と俺の家の白い屋根が見えてきた。
「じゃあね」
「お、おう」
いつも通りの1日の終わり。