レオの言葉が
心の奥深くまで、響いてくる……。
「ボクは青山くんみたいにお利口でもないし、聞き分けも良くない。いつだって、あわよくばキミが欲しい」
レオは、こんなにも自分の気持ちに正直だ。
雅人だって強引なことはしないけれど、まっすぐにわたしを想ってくれているのが伝わってくる。
「だから、ズルいことだってしてきた。たとえ傷つけても自分の手で幸せにしてあげられるから」
そんな風になれるのが……とても羨ましい。
「なのに、どういうわけかキミが他の男と幸せになるための手伝いなんて始めてる」
そういってはにかんだあと
「モトコにバカって言ったけど。ボクの方が、よっぽどバカかも」と、スカートに触れてくる。
「はぁ……!?」
どこ、触って――。
「んー。ここかなぁ」
「ちょっと……くすぐったい」
(なにかんがえてるの……っ!?)
「あ。あった」
ポケットから取り出したのは、スマホだった。
「どーぞ」
「どうぞ……って」
「もちろん。カミヤに連絡するんだよ」
連絡して来てくれるだろうか。
迷惑じゃ、ないかな。
忙しくて出られない可能性もあるし。
いいや。
……そんなの全部、言い訳だ。
連絡するのが、怖い。
迷惑と思われて嫌われたくない。
結局わたしはアイツが――。
「カミヤがきたらバトンタッチしてあげる。それまでボクがキミを守るよ」
「っ……」
「会いたいんでしょ?」
「…………」
「モトコ」
「……会い、たい」
ねえ先生。
助けてよ。
守ってくれるって言ったじゃない。
(このボタンを押せば……)
画面に表示された発信ボタンひとつで、先生に、繋がる。
そんな簡単なことに躊躇してしまう。
だからといってこれ以上、レオに
わたしの背中を押させるわけにはいかない。
勇気が、欲しい。
「……レオ」
「なに」
「どうして、わたしが先生に朝呼び出されたこと知ってるの?」
「……へ?」
「なんで?」
「ははっ。……愛の力、かな?」
「嘘だ」
「エスパーだよモトコ」
そんなわけあるか。
「まさか、まだ変なアプリ入ったままなの?」
「そういえば、ひとつアンインストールし忘れてたかもねぇ。あはは」
「レオッ……!!」
「怒らないで?」
「もうっ、」
「あれぇ。この音……」
「!」
――突然、聞こえてきたのは……。
「エンジン音?」
「だねー」
(まさか……仲間が増えたの…!?)
校庭に目を向けると
さっきの派手な連中とは打って変わって、真っ黒なバイクに乗る男たちが入ってくる。
着ているのは、黒スーツ。
バイクから降りた男のうち、ひとりが
黒マスクをしている――。
「……なぁんだ。呼ばなくても来たね」
#16 乗せてよ、黒豹。
.+
確証は、ない。
遠目で見て体型や髪型
黒マスクという点が
あの男を連想させるだけで
他人の空似という可能性も、あるわけで。
それでも――。
「……行くの?」
立ち上がろうとするわたしの手首を掴むレオ。
「騒ぎが静まるのを待ってからでも、いいんじゃない? 巻き込まれたら危ないよ」
「……離して」
「どうしても、行きたいんだ?」
「行き、たい」
わたしの返事を聞き
ふぅ、と小さくため息をつくレオ。
「あとで青山くんに一緒に怒られようか」
*
階段を降りていると――。
「どいつだよ! 本田さんのバイクにイタズラしたのは」
「この学校の生徒って情報は掴んでんだよ」
そんなことを言ってバットを振り回している連中がいた。
うちの学校には不真面目な生徒が多いが、まさか、暴走族に喧嘩を売った連中がいるの……!?
アイツらの前に出るのは、マズイ。
「このまま1階まで降りよう。足音、気をつけて」
レオが、耳元でわたしに囁く。
「……うん」
「怖い? 引き返す?」
「ううん。進む」
さっきの会話から、この学校の誰かのイタズラのせいで今めちゃくちゃな状況になっていることがわかった。
「……アイツら、誰か狙ってるみたい」
「当事者はガクガク震えてるだろうねぇ」
よくも授業をつぶしてくれたな。
よくも、こんな騒動起こしてくれたな……!
「まあ、“いれば”の話だけど」
「え?」
「ここの生徒の仕業かなんて、怪しいよねー」
「…………」
「あっちの掴んだ情報が“北高の制服をた着ていたのを見たから”とかなら簡単に偽装できるし。ただの言い掛かりって可能性もある」
レオの言うことも一理ある。
その場合、うちの学校に恨みでもある誰かの仕業ってことも考えられる。
それでも……
「もし、本当に暴走族のバイクがイタズラされて。このの生徒が真犯人だったなら……。どうなるのかな」
「んー。そりゃあ、見つけ次第、酷い目に合わされるだろうね」
「だったらそうなる前に追い返さなきゃ……!」
「なんで? さっさと張本人を差し出して連れて帰ってもらう方がよくない?」
「悲惨なことになるよ……!」
「だからー。見せしめにもなるし、それがいいって。どこかのクズのせいでこんな事態になったのなら本人にわびてもらうのがいいよ。モトコも授業どころじゃなくて腹たってるんでしょ?」
筋は通っているが
言っていることが、えげつない。
出会った頃に比べて随分と雰囲気が柔らかくなったとはいえ、やっぱりレオって恐ろしいヤツだな……。
「お前ら、なんの相談してんだ?」
――振り向くと、派手な髪色をした暴走族が2人いた。
やばっ……。
一瞬で、挟み撃ちにされてしまった。
「あーあ。モトコが大きな声出すから」
「アンタもね……!」
わたしは気が気じゃないのに
レオは肝が据わっている。
わたしを壁側に立たせ
隠すように、わたしの前に立つ。
……その背中は大きく見えた。
ヒョロくてモヤシとか思ってごめん。
すごいたくましいよ。
「怪しいヤツら発見したっすー」
「銀髪と、メガネ女子。連れて行きますか?」
スマホで誰かに連絡をとっている。
相手は幸い武器を持っていない。
おとなしくしていたら危害は加えられないだろうか。
「……モトコ、目、瞑ってて」
「え?」
「耳も塞いでた方がいいかも」
「なにする気?」
「いいから」
まさかレオ
ここで血祭りに上げる気じゃ……。
「あ、アンタたち。悪いこと言わないから、わたし達のこと見逃した方がいいよ」
「はぁ? なに言ってんだ?」
(だから、この銀髪ヤバイんだって……!!)
「大人しく言うことだけ聞いてろ」
2人とも、聞く耳をもたない。
せっかく親切心で忠告してやったのに。
もうなにをされても知らないからな……?
「しかしこの学校に優等生っていたんだな」
「その銀髪、女みたいな顔してるよな。女より使いみちあるんじゃね?」
「あとでまとめて脱がすか」
(は……?)
暴走族って。
こんなに、性質(タチ)が悪いの?
「……身を剥ぐ前にボクがキミたちの皮を削いであげようか?」