「あのね青山くん、」

「雅人」

「……へっ?」

「雅人でいいって言ったろ」


たしかに屋上でそう言われたけど……。


「いま、2人だよ?」


誰の目を欺く必要もないわけで。


特別親しげに振る舞う意味がわからないわけで。


「……あ。今から練習しとくべきかな?」

「いいから呼んで」


(……?)


「それじゃ……雅人」


なんだろう、この空気。

照れくさい……。


「あのね……放課後のことなんだけど」

「うん」

「掃除中に、外側から扉がしまって。それで気づけば眠っちゃってて。目が覚めたら保健室にいて。正直、自分でも意味不明で」

「は?」

「ピンチだったけどなんとかなった、という話。以上」

「……待って。先に帰ってたんじゃなくてか?」