慌てて特売品コーナーへ移動する。
あったあった。お目当ての品が。
当たり前だがいつもより安い。
このスーパーまでわざわざ自転車でやってきたのは、安売りされているこの油を買うためだった。
『一人一本限り』の札が目に飛び込んでくる。
わかってはいたが、せめて二本買えたらなぁ……。
「……そうだ。青山くん!」
「ん?」
「これ持って並んで」
油を手渡す。
「……は?」
よっしゃ!!!
青山くんの助けで、油を二本ゲットできた。
「ありがとう、助かった!」
「……どういたしまして」
ぽかんとしている青山くん。
それもまあ、そうだよね。
なかなかこの年でスーパーの特売品に食らいつく子なんていないよね。
青山くんはコンビ二価格のご飯に慣れているくらいだから油もきっと通常価格で買えちゃうような生活してるんだろうな。
スーパーの外までやってきたわたし達。
自転車の向きを変えるわたし。
「それじゃ、わたしはこれで……」
「急いでんの?」
へ?
「……ううん、そんなには」
洗濯物まだ取り込まないし夕食の準備するには早いし。
「あ、月曜日の授業の予習しなきゃ」
「なら暇だな」
いや、あの。
予習するって言ったよね、今。
「うち来いよ。すぐ近くなんだ」
「……は?」