*


翌日、家から少し離れたところのスーパーで買い出しをしていると意外な人物に会った。


学年一の、モテ男。

わたしの“仮の”彼氏。


――青山くんだ。


世間が狭いとは、まさにこのこと。

こんなところで会っちゃうなんて。


今日はお休みだから恋人のフリをしてもらうこともない。


背を向け、気づかれないようそっとその場を離れようとした、そのとき。


「素子じゃん」

「……!!」


青山くんに、腕をつかまれた。


「逃げんなよ」

「ごめ……」

「昨日。なんで帰ったの」

「へ?」

「放課後迎えにいくって言ったのに」

「……あ」


そういえばそんなことを言われていたと思い出す。

あれって本気だったの?


「ちょっとピンチで……」

「ピンチ?」

「や……てか、待って。油!」

「は?」

「これからタイムセールで油が安いから! 買ってくる!!」