『……あれ…僕……死んだはずじゃ……』


 幼児特有の、甲高い声が、辺り一面によく響く。


 そこにはあたしと、あの男の子しかいなくて、あとはいつも通りの真っ暗闇だった。


 あの男の子、ケガが治ってる……。


『え?ぜんぜん痛くない…ケガがっ……!』


 男の子も気づいた様子で、自分の掌を見つめて驚いていた。


 その顔は、やっぱりモヤがかかっていたけれど。


「どういうこと?あの子は死んだはず……」


 はっきり見たあの光景。瞳を閉じると、今でも目蓋の裏に、くっきりとソレが浮かび上がってくる。


 下敷きになったあの男の子は、全身から大量の血液を流していて、頭も強く打っていた。


 とても助かるような状態ではなかった。


「……考えられるのは、ひとつしかない」


 これだけは認めなくなかったけど、


『じゃあ、僕、死ねなかったの?これを、終わらせることができなかったの?』


 そう、男の子が言った。