「だぁぁぁあぁぁあ」

部活が終わった帰り道、華恋はひとりで頭を抱えていた。

プレゼントはてんで決まらず、彗の誕生日はもう明日になってしまった。

(どうしようどうしようどうしよう……)

早足で歩く。
今日中に決めないと、何も用意できないまま誕生日が来てしまう。

誕生日を知っておきながらお祝いできないなんて、それだけは絶対に嫌だった。

好きなのに。だけど好きだからこそ、悩むのだ。何を渡したらいい、どうすれば喜んでもらえるのか……。

(……あ)

ふと、華恋の足が止まった。

いつもなら通り過ぎてしまう、花屋の前。

(花なら、重くない……)

吸い込まれるように、店内へ。

ナズナ、ワスレナグサ、ポピー……。
色とりどりの花達に、心が踊る。

(綺麗……)

「……?」

「18日の……誕生花……?」

すると華恋の目が、ひとつの花にとまった。
それは、5月18日の誕生花、サクラソウ。

(5月18日って、先輩の誕生日だ……)

小さくて可愛らしい、ピンクの花。

(ぴったり……)

「よし、決めた。」

「すみません、これ、ください」

近くにいた店員さんに、声をかける。

「はい、サクラソウですね」

にこにこと笑う、小柄な女の店員さん。

「いくらですか?」

「730円になります」

小さめの花束にしてもらった。

「プレゼントですか?」

突然店員さんに聞かれた。

「あっはい、好……」

思わず好きな人への、と言いかけて、ぼっと顔が赤くなった。

それを見た店員さんが、楽しそうに笑いながら言う。

「サクラソウの、花言葉ってご存知ですか?」