「ふぅ、こんなもんかな?」

部活が終わり、片付けを終えて華恋は軽く伸びをした。

なんとなくいつも皆より少し遅めに帰るので、校庭にはもう誰もいない。

帰り支度も済ませ、夕焼けに染まった空を見上げた時。

「……池高?」

聞こえてきた、低すぎないその声にばっと顔を上げる。よく聞きなれた、声。

「っ先輩!?」

立っていたのは、帰ったはずの彗だった。

「また今日も最後まで残ってたのか」

彗が笑う。

「……先輩こそ」

突然の出来事に、せっかく静まっていた心臓がまた音を立て始める。

「今から帰るとこ」

「じゃあ、私と一緒ですね」

「途中まで一緒に帰るか」

「えっっ!?」

一緒に!?

「……嫌か?」

「いっ嫌じゃないです!嫌なわけ……」

(無いけど……)
(先輩こそ、嫌じゃないの……?)

きっと、彗には下心など皆無なのだろう。
それでも、分かっていても、嬉しい。

「行くぞ」

「っはい!」

自転車を押して歩き出す彗の後を、慌てて追っかけた。