「華恋、おはよう!」

結局あの後もプレゼントは考えつかないまま、次の日を迎えてしまった。

学校の下駄箱の前でぼんやり彗のことを考えていたら、ばんっと背中を叩かれた。

びっくりして振り向くと、琴美が立っていた。

「うわあびっくりした!琴ちゃん。
おはよう」

「随分ぼうっとしてたね。
どうかしたの?」

目に見えてぼうっとしていたよう。どうやら、恋は人を盲目にさせるというのは本当らしい。

「……それが……葉月先輩の誕生日プレゼントが考えつかなくて……」

小声になりながら、彗の名前を出すだけで顔を赤くしている華恋に琴美はくすっと笑う。なるほど、と。

「そんなの何だっていいんだよ!
気持ちを込めれば……」

教室に向かいながらそんな話をする。

「そそそそうかも……しれないけど……でも、すす、好きな人……だし……」

最後は小声になりすぎて琴美以外聞き取れない程。

「んー、確かにねぇ……それはそうか...」

そのうち教室に着いていた。

「琴ちゃんは、いつも佐木崎君の誕生日どうしているの?何あげているの?」

「えっ!?」

佐木崎君、その名前にぼっと顔を赤くした琴美。

(分かりやすい……)

内心くすりと笑う。

「な、何って…そんな大したものはあげてないよ……、去年はノートと消しゴム、その前はストラップ。今年は、何にしようかな……。」

江留の誕生日は8月。毎年琴美は江留に何かしらの誕生日プレゼントを渡していた。

「ノートに消しゴム、ストラップか……」

華恋はうーん、と考える。

「本当に……何がいいのかなぁ……」