"グイッ"

「っえ!?」

そのまま引き寄せられる。

(……?……!?)

(えっ、これって……)




何が起こったの?
頭が上手く回らない。


だって、だってこれって……







抱きしめられ…!?







「な、なん……、せ、せんぱい……」

頭がパンク寸前のところ、呟く。

















「――好きだ」















(……え……?)

そっと離れる体。
自然と、彗と目が合う。

「先輩……?今……?」

真っ直ぐ彗と視線がぶつかる。

「好き、だ、

華恋。」

下の名前を呼ばれ、肩が跳ねる。

好きって、私を?

夢?
なんで、私を……
いつから……

そんな言葉達しか頭に浮かばない。
だって、私はフラれる覚悟で、告白を……

彗は出会ってからずっと、優しく接してくれていた。一緒に帰ったり、放課後2人で練習したり、何度も、何度も。だけどそれって、仲のいい後輩としてじゃないの……?

顔がこれ以上ないくらい熱くなる。

(嘘……)

だけど、彗の目は真っ直ぐ華恋を捉えている。その目が嘘でないことを物語っていた。

そう、華恋が彗に一目惚れしたように、彗も華恋の笑顔に惹かれていたのだ。

「……私も……好きです……」

「……うん」

「……っ大好きです……!」

気がつくと彗に抱きついていた。

「…っ!」

彗は驚きながらも、受け止めてくれる。











(……)

(…………)

(あっ!?)

「わあぁっ!!」

「!?」

数秒後、自分の行動にはっと気づいて、ばっと彗から離れる。
もう顔は真っ赤、心臓はドキドキドキドキ音を立ててとまらない。

「すっすすすすみませ……!私……!」

頭がパンク寸前どころか、このままだと私の心臓が壊れる。確実に。

これ以上真っ赤な顔を見られたくなくて、というよりシンプルに恥ずかしすぎて、彗に背を向けた。

(わぁぁぁぁあぁぁぁっ私……なんてこと……っ)

ひとり、大混乱していると。
ふわっと、後ろから優しく彗に抱きしめられた。

(……!)

「……なんで謝るの」

「せっ先輩……っ」

「は、恥ずかしいです……」

けれど、その腕が解かれることは無く、ぎゅっと手に力が込められる。
その仕草が妙に愛おしくなって、華恋がそっと彗の手に触れる。
すると。

「……こっち、向いて」

少し、彗の腕が緩められた。

「……?せんぱ……?っ!?」











(……え?)


夕焼けの下、2人の影が一つに重なった。