「日、のびたな」

「そうですね……」

ドキドキ――

「具合、ほんとに平気なのか?」

「は、はい……」

ドキドキ――

(早く、早く渡さなくちゃ……)

「池高?」

「は、はい…!?」

ドキドキ、ドキ――。

「やっぱりお前今日変だぞ?」

(……っ)

変なのは、変なのは……。

「(先輩の、せいです……)」

彗は本当に心配そうにしている。
本当に、下心とか全く無さそうだなこの先輩…。

少しだけ凹む。

「大丈夫ですよ…」

「なら、良いけど。

「池高は笑っていた方が似合うよ」

「へ……?」

突然そんなことをいうものだから、面食らう。

ふっ、と彗が笑う。

「……!」

ドキッとしたけれど、いつもその笑顔には変な緊張を抜いてくれる力がある。

(ああ、もう。)

この人の笑顔に、私は一生敵わない。

すうっと深呼吸をする。

悩みに悩んで選んだ、プレゼント。
そっと鞄から取り出して、

「……先輩」

彗の後ろ姿に呼びかける。

「?」

振り向いた彗に、
サクラソウの花束を差し出した。











「…お誕生日、おめでとうございます!」






「え…?」

彗が目を見開く。

「誕生日……?

なんで知って…」

「由香理先輩が教えてくれました。
サクラソウの花です。
5月18日の誕生花なんですよ」

精一杯、にっこりと笑う。

「そっ……か……ありがとう……」

花束を受け取った彗が、恥ずかしそうに笑った。

その顔が赤く染まっていることに、華恋は気づいていなかった。

「先輩、知ってますか?
サクラソウの花言葉。」

「サクラソウの花言葉……?」

「はい、サクラソウの、花言葉は、

"憧れ"と―――」