(うわぁぁぁぁぁぁぁあ)

あの後は散々だった。

何も無いところで転んだりして、本気で彗に熱があるのではと心配された。

マネージャーとしての仕事を始めてしまえば何とか気持ちは切り替えられたものの、終わってしまえばまた心臓はうるさくなる一方。
1日この心臓でよくもったものだ。

「池高」

「はいぃ!?」

こんなんでちゃんと彗を誘えるのか、と思っていた矢先、彗から声がかかった。

いつものように、いつの間にか校庭には誰もいない。

それはつまり、つまり……。

(先輩と、ふたりきりだ……!)

「帰らないのか?」

彗が少し心配そうに聞く。
先ほどの様子をまだ心配している様子。

「あっあの、帰る……んですけど……」

誘うなら今だ。
これを逃したらもう誘えない。というか、これを逃したらもう先輩帰る。

なのに、上手く言葉が出てこない。

あの、やその、だけを連発する華恋を不思議そうに見ていた彗が、サラッと言葉を発した。

「一緒に帰るか。」


「えっ!?」

誘おうと思っていたのに、その言葉を彗から聞くなんて。

「今日お前変だったろ。ひとりで帰すの心配なんだよ。」

「あっいやそのそれは……」

変だったのは誰のせいなのか。

少しくらい熱以外の事も疑えバカと、先輩に対する態度らしからぬ事を思いながら、彗と帰れることに心を弾ませた。