校舎を出て、校庭に入る前にサッカーゴールの辺りに目をやる。

(……先輩、まだ来てない……)

彗の姿はまだ見えなかった。

なんとなく、ほっとしていたら。

突然、後ろから声がかけられた。

「池高?何してんだ」

「うわぁぁあっ!?」

3センチは飛び上がってから、振り向くと、首を傾げる彗がいた。

「せっ先輩!」

「そんなに驚かなくても……」

彗が苦笑する。

「すっすみません!突然だったもので……」

(うわぁぁどうしようどうし……)

ドキドキドキドキ、
鼓動は早くなるばかり。

(心の準備くらいさせてくださ……っ)

赤い顔を隠そうと咄嗟に下を向いた。

「池高?」

どうしよう、顔があげられない。
だってきっと私は今、リンゴより真っ赤だ。

「!?」

ふと、おでこに少し低めの体温を感じる。これは、彗の、手……?

「せんぱ……!?」

「顔真っ赤だぞ?熱あるんじゃ……」

「だっだっだだだ大丈夫です!
大丈夫ですので!
大丈夫ですから……っ!」

もう何が何だか分からない。
頭が真っ白とはまさにこういう事。

ぽかんとする彗を置いて、猛スピードでマネージャーの仕事に取り掛かった。