ねえ、私はあなたを見ていたんです。

大切な人の誕生日に贈るのは、ずっと伝えたかった言葉でした。


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「はぁぁぁあ〜……」



部屋のベットでゴロリと寝そべり、池高華恋(ちだか かれん)は本日6回目のため息をついた。

「どうしよう……」

時刻5時30分。4時から何度も同じことを呟き、ずっともんもんとしていた。

華恋の悩みの種は、1週間後の5月18日の事。華恋が高校1年生の時から片想いをしている葉月慧(はづき けい)の誕生日なのだ。

その事実を知ったのは、つい1週間前の事。高校に入学し、部活見学の時にサッカー部である彗に一目惚れ。運動には自信が無いため、マネージャーとして入部した。

けれど、驚くべきことに華恋は彗の誕生日をつい最近まで知らなかった。

華恋の良き相談相手で親友の蒼姫琴美(あおひめ ことみ)にも、好きな人の誕生日くらい把握していないのかとお説教をくらったものだ。

琴美は吹奏楽部で、同じ部の幼馴染、佐木崎江留(さきざき える)に片想い中。

琴美と高校で出会って以来、何度江留の愚痴を聞いたことか……。

けれど琴美は恥ずかしがり屋なだけで、本当は誰よりも江留の事が大好きなのを華恋は知っている。

(なのに私は誕生日を知ったのも最近だなんて……)

華恋はベットから体を起こし、肩を落とした。

先月の4月7日の華恋の誕生日に彗からおめでとうとお祝いされたこともあるのだ。

その時に彗の誕生日を聞くことはじゅうぶん出来たのだが、彗が誕生日を知っていてくれたこと、おめでとうと言ってくれたことに赤面するばかりで全く言葉が出てこなかった。
赤い顔を隠すのに精一杯で。

直接聞くことは結局出来なくて、サッカー部の先輩の由香理(ゆかり)に教えてもらったのだ。

聞いたからにはお祝いしようと思ったのだが、何をしたらいいのか。
プレゼントには何を渡したらいいのか……。その事に頭を悩ませていた。

「華恋ー、ご飯よー!」

1階のリビングから母に呼ばれる。

(もうそんな時間!)

「……っはーい!」

返事をし、またひとつため息をついた。