男は白い手をわたしの方へと伸ばし、顔にかかった髪を払う。
そして剥き出しになった顔の輪郭を白く細い指で撫でながら、問うた。


「それよりも君、もしかして自殺志願者?」


形式は疑問形。
けど、口調は確信を孕んでる。

まんまと死のうとしてたことがバレてどきり、と胸が鳴った。それまでぼんやりとしてた脳の中をいくつもの考えが超速で巡る。

警察に突き出されたらどうしようとか、親に連絡された面倒だとかっていう考えが。


「……だったら?」


だから、そう尋ねるわたしは男の真意を探るように注意深く見つめる。

もし、男が何か余計なことをしようとしてるな今すぐに立ち上がって逃げなければいけない。
わたしは死にたかっただけで怒られたかったわけじゃない。

というか、怒られてばかりの人生に嫌気が指したこともまた、死にたいと思った理由のひとつだった。


「ふーん?」

「止めたり、しても無駄だから。」


余計なことはすんなって意を込めて、睨みつけるように言う。


「どうして、僕が君を止めると思うの。 止めないよ。僕には君が死のうが生きようが全く関係ないし。」


けど、そんなわたしの態度なんて意にも介してないって風に男は笑った。