生温い風が吹いて、プリーツスカートの裾を翻す。
勝負服か正装か迷って、制服にしたわたしの首元では赤いスカーフのリボンが揺れていた。

もうこの制服ともお別れかあ、なんて思ったら少しだけセンチメンタルな気分になる。
そんな風にこの状況に酔ってる自分に自嘲的な笑みが漏れた。


遠い昔、自分に翼があったら良かったって思ったことがある。

そしたらこの窮屈な家からも学校からも逃げられるのにって。
逃げて自由になれるのにって。

青空の中を踊るように舞う鳥を眺めながら、その翼を羨んだ。


けれど、今は違う。
翼なんて欲しくない。
むしろ無くて良かったとさえ思う。


だって、もし翼があったら、ちゃんと沈めないから。


両手を真横に伸ばす。
わたしが広げるのは人工的な手の翼。
それでいい。
飛べなくていい。
真っ逆様に落ちてしまえばいい。