もう疲れたからショートカットしてしまおう。
13階建てのビルの屋上。
施錠すらされてない廃ビルに潜り込むのは案外簡単だった。
ところどころ焦げたような跡があるコンクリートの上を歩く自分の足に迷いはない。
夜に吸い込まれるかのように体が引き寄せられていく。
フェンスはない。
夜とわたしの間を阻むものは何一つなかった。
膝までくらいの段差を登る。
都会では見上げた先の夜空よりも見下げた先にある夜のビル街の方がずっと綺麗だ。
時刻は23時02分。
無数の光がキラキラと輝いてる。
遠くから見れば綺麗だけど。
その渦中にいる大人たちはきっと死んだ目で働いてるんだろう。
そこまで考えて、皮肉めいた笑いが出た。