「いくら?」
夏希はそう言って差し出されたお金を手に取った。

『……ホテル代込みで5万』

『へぇ。 相場はホテル無しで1、2万って聞いたけど?』

『知ってる』

この条件が飲める人ばかりを取ってきた。
同じ金額を稼ぐのに回数は少ない方が良いから。

『じゃあ何? キスして1万、触って1万?』

大きな手で髪を撫で、意地悪に笑って見せる。

『何それ、内訳?』

『そう。 触ってもらって1万で入れたら2万ってとこ?』

『あはは、そうかも』

『超高級店だね』

腕を引かれ、抱き寄せられる。

でも不思議と嫌じゃない。

触れ合った唇から、ほんの少しお酒の甘い香りがした。

啄むような軽いキスを何度も交わす。

ただそれだけの優しいキス。

それが終わるとポンポンと髪を撫で笑顔を見せた。

『……続きは?』

このまま買われるのだと思っていたのだけど。

『お金ないから、キスしか買えない』

そう言ってまた軽くキス。

『嘘つき』

『嘘じゃないよ』

『ホストじゃん』

そう言い返した私に悪びれて笑う。

策士め。
最初からそのつもりだったくせに。

『じゃあこれ、約束の2万。 前回と今回のキスのね』

急に割り切ったかのように一万円札を握らされる。

そんな風にされたら突き返すことも出来ないよ……