連絡先も知らない。
勤めてるお店も知らない。

下の名前と顔だけ……

そんな人ともう一度会えるなんて奇跡だと思った。


『今日も駄目か……』

夏希と会った付近のコンビニやホストクラブが並ぶ通りを歩いてみても会えない。

やっぱり奇跡は起きないか。

こうして始発の時間になると駅前に戻って寝床を探す。

これももう一週間続けている。

駅に一番近いコンビニに寄り雑誌を立ち読みする。

可愛いファッションをした女の子の達が楽しそうに写っていた。

年齢を見ると16歳や17歳の子が多く、思わず自分と比べてしまった。

普通の家庭で、
普通に両親がいて、
普通に高校に通って……

何度も羨ましいと思ったけど、もうどうしようもない。

パタンと雑誌を閉じ顔を上げる。

と、窓の外にあの時のままの彼の姿が見えた。

『え⁉︎ 嘘⁉︎』

今まで会えなかったのに何で此処で⁉︎

どうやら向こうも気づいたようで、そそくさと逃げていく。

『ちょ、待ってよ!』

慌てて雑誌を戻し、コンビニを飛び出した。