お金さえ貰えれば誰だって良かった。
どうだって良かった。

新しい服が買えて、美味しいもの食べれて。

それさえあれば我慢できた。

それなのに……

『何で泣きそうになってんの?』

涙が溢れそうになる。

『馬鹿だな……』

夏希に腕を引かれ、ベッドに引きずり込まれる。


こんな出会い方じゃなかったら……
私がそう思うのは卑怯だ。

『最初から何もする気ないよ』

意地悪に笑いながらも、髪を撫でる手は優しい。

『可愛い子と出会えてラッキーとは思ったけどね』

夏希はそう言って満面の笑みを見せた。

『大丈夫。 私、出来るから!』

売りを始めた時から後悔しないと決めた。

ここで挫けたら今までが無駄になってしまう気がした。

『ってか、流石にこの「さあ、やれ」の雰囲気ではねぇ』

ベッドを下り、冷蔵庫に手を掛ける。

『何飲む? 飲んで喋っても楽しんじゃね?』

『……うん』

『お子ちゃまだからオレンジでいい?』

って、お子ちゃまって!
そんな事、誰にも言われた事ないのに!

『皆、大人っぽいって褒めてくれるよ?』

『ははっ、どこが? 一目で高校生ってわかったし』

……高校生じゃないってば。

夏希はビールとジュースを手にしてベッドに戻る。

『乾杯しよ、乾杯』

『何に?』

『……お預け記念日?』

その言葉が妙に面白くて、2人で笑いあった。