“そーだ、言い忘れてた。”
“俺、花郷のこと好きじゃなくなったから”
スマホを開けばそんな文章が届いていて、え、と声が漏れた。
“なんで?”
“ずっと好きだったじゃん”
“や、なんか…うん。”
“結構前からなんだけど”
“諦めたの?”
“てゆーか好きじゃなくなった。”
なんかあったのかな、と思うけど、私が聞くことじゃないかな、とも感じる。
けっきょくそーなんだ、とだけ送って、話題終了。
“興味なかった?”
“いや、私聞いてもいいのかなって”
“だめだったら言わないでしょ笑”
そっか、と納得して、でもやっぱり聞くのは気が引けて。
“じゃあ廉くんも好きな人募集中なんだ”
話題をそれとなく変えてみる。
“も、って?”
“私も募集してるの、好きな人”
“ねぇ、今部屋?”
仲間だ、なんて送ってみれば、いきなり話を変えられた。
“え、うん。どうして?”
“電話かけていい?”
“いいよ”
どうしたんだろう、なんて思いながらそう返した瞬間、画面が通話画面に切り替わった。
「どーしたの?」
[…や、なんかしたくなって]
「ふーん…?
好きな人いなくなったから?」
「ふは、かもね」
久しぶりに聞く声、っていっても二週間ぶりくらいかな。
2カ月前までは毎日聞いていたのに、なんだか変な感じ。
やっぱり廉くんの声は落ち着く。
「好きな人欲しいの?」
「うん、ほしい。
胸きゅんが足りないの」
「胸きゅんて…
まぁいいや、紅葉さ、俺のこと好き?」
「あー、うん、好きだよ」
変なこと聞くなぁ、って思った。
だって廉くんは知ってるでしょ。
私が嫌いな人と連絡取り合うようにみえますか?
当たり障りなく接することはできても、嫌いな人のなかに踏み込むことは決してしない。
親しくなろうとも思わない、というか高校が違うのに連絡しようと思わない。
「あー、じゃあ俺のこと好きになればよくない?」
「……んんん?」
いまなんて、と思わず聞き返す。
そんなの考えたこともなかった。
だって、廉くんは友達で──。
「だからー、好きな人欲しいんでしょ?
俺を好きになればいいじゃん」
「どうしてそうなったの」
「俺今好きな人いないし、ちょうどいいじゃん。
お互い嫌いじゃないんだしさ」
「あー……たしかに?」
とてもいい案だと思った。
廉くんを好きになればいい。
簡単なことだろう、だって今も男の子の中では一番好きなんだから。
廉くんは今好きな人はいないし、たしかにちょうどいい。
私はわかった、と返事をした。
「…わたし、廉くんのこと好きになる」