「…あーもう!!
好きな人ほしいー!!!」
昼休みのガヤガヤした教室で、後ろの席のあいかに言ってみる。
…あ、あいかっていうのは高校でできた初めての友達なんだけど。
かなり可愛かったりする。
「なに、もー。
うるさいなぁ、わかったよ」
「ひどくなーい?
友達の悩みくらい聞いてよー」
「だってー、紅葉ずーっとそう言ってんじゃん!
いい加減聞き飽きたってゆーか?」
お弁当を食べながら、たしかに最近ずっと言ってるなぁ、なんて。
「…だって、最近ちっともきゅんきゅんしてない」
「まぁきゅんきゅんするようなことないしねー」
「好きな人が欲しいの!
そしたらきゅんきゅんできるじゃん!
べつに付き合えなくってもいいのー…」
中身を食べ終わったお弁当箱の蓋を閉めながら、うー、と唸ってみる。
「じゃあちょうどいい人がいるでしょ、あの人とか」
そう言ってあいかが指さしたのは、窓際から2番目の席の村山くん。
あんまり目立つタイプじゃないけど、実は彼の顔がかなり私の好みだったりする。
「…あー、だめだよ、村山くんは」
「え、なんで?」
「んー…なんででも」
ついこの間彼と連絡先を交換して、やり取りするようになって。
本人にないしょ、って言われたからあいかにも言ってないけど、村山くんにはかわいい彼女がいるらしい。
…ちなみにどうしてその情報を私にくれたのかは、私も知らない。
「なんかあったの?」
「ん?なーんにも?」
「えー…なんで?」
なんでだろうねー、なんて流しつつ、村山くんを眺める。
あー、やっぱりめちゃくちゃタイプ。
でも、彼女いるしなー…。
眺めてる分には申し分ないけど、好きになるからにはやっぱり辛くない恋がしたいから。
村山くんは対象外、っと……やば、目あっちゃった。
「次の授業なんだっけ、」
「英表ー。
そのつぎ体育だよ」
「体育かぁ…やだー」
ぶっちゃけこのクラスには村山くんとその隣の武谷くんくらいしかイケメンがいないから、好きな人を見つけるにはかなり困難。
席替えもまだしてないから女子と男子が真ん中で半分にわかれてる。
これじゃあ好きになるはずがない。
「…好きな人、ほしいなぁぁ…」
胸きゅん不足、なんて。
廉くんが聞いたら笑うだろうか。
ちょっと今日言ってみようかな、なんて。
授業に集中なんて、ちっとも出来なかった。