[…ないてる?]
「…ちょっとだけ、」
れんくん──日下部廉は、中学の時の同級生だ。
仲良くなったのはほんの半年くらい前だけど、中学で一番仲のよかった男子は間違いなく彼。
少し意地悪で変態だけど、なんだかんだ優しい。
あと、歌うのが上手で声もかっこいい、と思う。
[…なんか話す?]
「…うん」
[なんの話しようか]
「…ひとりで喋ってて、わたし聞いてる」
「は?やだよ、お前もしゃべるの。」
冗談交じりにそう言えば、廉くんも笑いを含んだ声でそう言った。
「…好きじゃなくても、悲しいものなんだね」
[んー……どうだろうな。
まあ、ちょっとは好きだったんじゃね?]
「そうかな、」
[そうだよ]
廉くんは、欲しい時に欲しい言葉をくれる。
いままで知らなかったけど、これってすごく心地いいものだ。
もともと行動パターンが被ることがよくあって、思考回路が似てるんだろうとは思っていたけど。
「……廉くんを好きになればよかった」
[なにいってんの、おまえ]
ポツリと呟けば、はいはい、と呆れたように言われた。
だって、ともごもご言ってみる。
「廉くんなら、私が思ってることだいたいわかるでしょ?
私も、廉くんの考えてることはなんとなくわかるし」
[あー、まぁ確かに…?
でもざーんねん、俺好きな人いるから]
「…そうだったね、知ってる」
廉くんの好きな子とはあまり仲良くないけど、いちおう聞いたことはあった。
可愛い子で、でも少しわがままで、女子にの間じゃあ性格が悪いと噂になっていた子。
[なに、嫉妬してる?]
「まさか。
そんなわけないでしょ」
いつもみたいに軽口を叩きあいながら、彼氏とのことを頭の隅っこに追いやってしまう。
「……ありがと、元気でたよ」
[ならよかった、じゃあまた]
けっきょくそんな感じで通話は終了した。
廉くんはほかの男子みたいにからかったりしない。
話を聞いてくれるし、下手に茶化したりもしないし。
廉くんと友達になれてよかったな、って、改めてそう思った。