私は、「ありがとう」の言葉も言わずに、黙って風船を受け取る。 「ぼく、ありがとう。ごめんね、この子恥ずかしがり屋さんなの」 「いいよ。行こう、輝」 「う、うん」 そう言って去って行く男の子の後ろ姿をずっと見ていた。 「王子様……」 「ん?なぁに?梨子」 「なんでもないっ…」 私にはピンチを救ってくれた王子様のように見えた。 ずっと心臓はドキドキしている。 初めての感覚だった。 これが私が真緒くんに恋をした日。