あまりにも悲しげに揺れた瞳を見て、あたしの身体は硬直した。


…どうして?
あたしに嫌われることは全然恐れていなかったのに、独りになるのは怖いというの?



「…沖宮さんは関係ありません。
離してあげて下さい、飛澤さん」


静まり返った空気を変えたのは小鳥遊さんだった。


「確かに僕がこんなことを言う資格はないと思っています。彼女を巻き込んでしまったのは他でもない、この僕ですから。
…沖宮さん、一つ言っていませんでしたね。どうして僕が潤達に追われているか」



こちらへゆっくりと歩み寄ってきた小鳥遊さんは、バイクの鍵をポケットへ仕舞うと、決心したように言葉を紡いだ。


「……彼らは僕を助けようとしてくれたんです。火鎖我族から逃げ出した僕を、喧嘩の世界から抜け出させる為に。
あの時追うと言うよりも捜してくれていたんですよ。まあ口論になって殴り合いをしましたが…」


あたし達までの距離が残り10メートルと言ったところで、飛澤さんがそれを止めた。


「戯言は飽きた。脱退したいならそれでいいと言ったはずだ。俺が呼んだのは悪鬼実野族だけなんだが」