「なぁ舞華。 あいつとはどうなった?

上手く騙せてるのか?」


「あいつって結菜のこと?

えぇ勿論。 私が声をかけると何も知らずにニコニコするわ」


クスリと笑うのが聞こえた。



「ほんと、馬鹿で哀れな奴だよな。

余計なことに首突っ込まなきゃ良かったってのに。

まあ、こっちとしては楽しみが増えて良かったけどな」


二人で甲高く笑う声が、嫌でも耳に届いた。




嘘だと思いたかった。


自分の耳を疑った。


杏奈ちゃんと話しているのは誰なの?


本当にあの舞ちゃんなの?



泣き出しそうになった私は、静かにその場から走り去った。


ただひたすら走って、走って───




気が付くと、家の前だった。


私は自室へ駆け込むと、枕に顔を埋めて泣き続けた。


泣き疲れて眠るまでずっと……




───目が覚めた時には、私の瞳は絶望に満ち溢れていて、光を失っていた。