「あっ…」

思わず呟いてしまったら、副社長は気にしないでと言うように微笑んだ。

「兄弟姉妹もいなくて、家に帰っても1人でした。

父は俺がまだ起きていない朝早くに家を出て、俺が眠ってしまった夜遅くに帰ってくるって言う人だったので。

当然、父が家に1日中いるなんて言うことはありませんでした。

学校から帰ってきたら押し入れに入って、1人で秘密基地を作って遊んでいるって言う子供時代を過ごしていました」

「…寂しかった、ですか?」

「まあ、正直なことを言うとそうでしたね。

運動会とかの学校行事にも出てくれなかったですし、一緒にご飯を食べるなんて言うこともなかったです。

学校給食がない時のお昼ご飯は、通学路にあるお惣菜屋さんのおにぎりでした」

何となく返すことができないでいたら、
「父を恨んでいるって言う訳ではありませんよ」

副社長が言った。