止まったはずの涙がまたこぼれ落ちそうになってくる。

泣いちゃダメだと自分に言い聞かせても、どうすることもできない。

「戻りま…って、えっ?」

社長室のドアが開いたかと思ったら、そこから現れたのは木田さんだった。

「き、木田、これは違うんだ…!

ちょっといろいろあった訳で…」

社長が慌てて木田さんに説明をするけれど、
「だいたいは察しています。

お昼ご飯を買ってきました」

木田さんはそう言うと、社長に紙袋を渡した。

紙袋からはバターの甘い香りが漂っている。

「ありがとう、木田」

木田さんから紙袋を受け取った社長はお礼を言うと、
「つづりちゃん、クロワッサンを食べて元気を出してよ」

社長がそう言って、私に紙袋を差し出してきた。