「何、れる」
彼は真っ黒な瞳で私を見つめる。
「名前を、教えて……?」
ずっと、彼とか君とかって呼んでるから。
「君のこと、知りたい」
私の栗色の髪が揺れてサラッと音を立てる。
「……ふっ、そうだな。まだ名前言ってなかったな」
彼がすごく優しく笑って私を見つめるから、少し驚いて頬が赤くなってしまった。
「笠岡 雪」
かさおか せつ。
「“雪”って字を書いて“せつ”」
名前の通り、雪みたいに綺麗でとても良い名前だな。
「笠岡くん、いつもありがとう」
そう私が笑うと笠岡くんは私の頭を優しく撫でて口を開いた。
「雪でいい」
そう、微笑んで。