「ここらへんに住んでるの?」



「はい」




笑われたら

少しだけど落ち着いてきて


私はまた隼人くんの横に座った




「毎日ここでさっきみたいにボーッとしてるわけだ」





「え!?見てたんですか!?」





「いやいや、見てたっていうか変な子いるな〜って」




「…恥ずかしいです」




「でもこんなに気持ちいいからわかるなーその気持ち」




わかるって言ってくれて

嬉しくて

隼人くんの横顔に見とれた





「ん?」




「嬉しいです」




私がそのまま隼人くんにそう伝えると

隼人くんはすこし驚いた顔をして

またすぐ優しい笑顔で笑ってくれた






「名前、教えて」



まさか人生で隼人くんに名前を聞かれる日がくるなんて
思ってもみなくて

"名前、教えて"

もう1回
心の中で聴き直す





「…色葉音海です」



「オトミちゃんね、オッケー。漢字は?」



「イロハは色彩の色に葉っぱの葉で、オトミは音楽の音に海です」


そういって
私は海を指さした



「へえ、なんかすげえ良い名前。じゃあ、ウミちゃんだね」




「ウミちゃんって呼ぶ人、初めてです」




「じゃあ俺だけね」


そう言ってきた彼の顔が

大ファンの私でも
テレビでも雑誌でもライブでも

どこでも見たことないような笑顔で笑うから

また信じられなくなって

これは夢なんだと

そう思ってしまう