「カノンってば」



それでも、テレビを見て聞こえないふりしてるあたし。



「カノン、あのね、あたしにとってカノンは大切な妹だから。離れて暮らしてもそれは変わらないからね」



か細くつぶやくお姉ちゃんの声。



こんな寂しそうなおねえちゃんの声は初めて聞く。



分かってる。



お姉ちゃんはあたしを大切に想ってくれていること。



「…………」



「だからカノンにはいつも笑顔でいてほしいの。それと、あたしがいない間、お父さんとお母さんを宜しくね」



無言のあたしに優しく語り続けるお姉ちゃん。



「じゃあね!! カノン」



あたしはそれでもテレビに集中してるふりをして何も答えなかった。



家を出て行くお姉ちゃんの後ろ姿さえ、あたしは見送らなかった。



これでいい。



これでいいんだ。



あたしはお姉ちゃんの気持ちより、勇太を選んだんだから。