「じゃあ、あたし行くね」



「気をつけてね。寂しくなったら帰ってくるのよ。あなたは頑張りやだから無理しすぎないでね」



元気なお姉ちゃんの声と心配そうなお母さんの声。



あたしは無言のまま、リビングでつまらないテレビを見てた。



「駅まで送るわよ。ユウリ」



「イヤ、いいってば。もう子供じゃないんだし、落ち着いたらすぐ連絡するって」



お姉ちゃんは身支度を済ませ、キャリーバッグを片手にお母さんに言った。



そうなんだ。



お姉ちゃんは今日東京へ発つ。



勇太との出来事があったあの日からあたしはお姉ちゃんを避けていた。



お姉ちゃんを憎みたくなかったから。



「カノン……」



お姉ちゃんが、小さな声であたしを呼んだ。